Ink, Thread and Open Doorsインクと糸と、開いた扉
冬の数日間を過ごした、いくつかのタトゥースタジオ。デニムを縫う針、膝の上のスケッチブック、壁一面のフラッシュ。そして、似顔絵を手にした見知らぬ旅人のために開かれていた扉。





外は灰色で、冷たかった。けれど店の中は、ランプの灯りと紙の匂いと話し声で温かい。似顔絵を手に訪ねると、まるで待っていたかのように、そのまま中へ招き入れてくれた。











店の隅では、赤いボーダーのニットの男が、膝にジーンズを広げて手で繕っていた。タトゥーの入った指、針、長い赤い糸。ひと針ごとに笑い、話をして、手元を一度も確かめない。




























民族衣装にスカーフを巻いた女性がデスクに座り、絵を描きはじめる。鉛筆、タブレット、また鉛筆。花がいつのまにか龍に変わっていく。腕のいい人が仕事をしているとき特有の静けさが、部屋を満たした。



















別の日、別の扉。深い緑に塗られた古い店構え、窓の上には年号。その奥にも、同じ気さくな歓迎があった。まず握手、質問はそのあとで。
















どの店にも、その店の音があった。マシンの唸り、鉛筆の擦れる音、糸を引く音。共通していたのは、開かれた扉だ。ひとりにひとつの似顔絵。そして、まだ返しきれていない乾杯。
