




Up from the Valley谷から、山へ
夜明けのヤシとうろこ雲、金色の丘に囲まれた湖、手描きの看板が並ぶ玄関口の町、そして花崗岩の中へと登っていく道。バイセイリアからセコイア国立公園へ向かうロードトリップ、第1話。
バイセイリアの朝は、平らに始まる。サン・ホアキン・ヴァレーはどの方向にも続いていく。果樹園、出荷場、まっすぐな長い道。しばらくは、近くに山があるなんて信じられないほどだ。
けれど、霞が出る前の早い時間に東を見れば、そこにある。地平線に沿って淡く連なる壁、シエラネバダ。あの上のどこかに、地球でいちばん大きな生きものたちがいる。この日の計画は、それだけだった。あそこへ向かって走る。



空が仕事の半分をしてくれた。谷の上にうろこ雲。鱗のように並んだ何千もの小さな雲と、最初の金色の光を受ける一本の松。いい兆しだ、そういうものを信じるなら。ロードトリップの途中では、たいてい信じている。



東へ二十分も走ると、大地が折り重なりはじめる。最初の丘に抱かれたカウィア湖。カウィア川をせき止めたダム湖で、その水は、僕らがこれから向かう高地から流れてくる。秋には水位が下がり、ハウスボートが金色の斜面のそばで低く休んでいる。



青と白の、水に浮かぶ小さな家たち。夏の週末に貸し出され、いまは静かだ。休みの日の過ごし方を見れば、その土地のことがよくわかる。



このあたりの丘はライオンの毛並みの色をしている。長い夏に焼かれた枯れ草の金色、その上に黒い縫い目のように散らばるオーク。カリフォルニアと聞いて海辺を思い浮かべる人が、忘れがちな風景。

そしてスリーリバーズ。公園の手前の最後の町。カウィア川がいくつもの支流に分かれ、道が本気を出しはじめる場所。看板の上には巨大なアイスクリームのコーン。誰も理由を説明しないし、誰も説明を求めない。


ガソリンスタンドの前で美しく錆びていく古いビートル、赤とターコイズに塗られたフローズンヨーグルトの店、木の塀から生えたサボテン。玄関口の町は、旅人や物語や奇妙なものを集めて、いちばんいいものを表に飾っておく。
小さな町のしるし




並んだ郵便受け、鉄板から切り抜いたカウボーイ、番地を掲げた木の柱、トーテムをのせたマーケットの看板。数千人の小さな町が、手づくりのやり方で自分の名前を書いている。


ポーチの下では、ブロンズの二人がベンチに並んで本を読んでいる。隣では、木彫りの熊が魚を抱えて駐車場に笑いかけている。どれも、スリーリバーズに来る目的ではない。けれど、覚えて帰るのはこういうものだ。



公園の入口を過ぎると、ジェネラルズ・ハイウェイが登りはじめる。ヘアピンカーブを何度も繰り返し、麓から何千フィートも上へ。道の下では、川が花崗岩の上を白く流れる。空気が変わる。オークの木が少しずつ姿を消していく。


トンネル・ロック。岩の上にもうひとつの岩がのり、その下を昔の道が通れるほどの隙間がある。いまは車は脇を回っていく。それでも人はその下を歩いてくぐる。くぐらずにいられるはずがない。



そして花崗岩。森から突き出た大きな裸のドーム、銀と黒の筋が走る岩肌。谷はもうずっと後ろだ。前方の木々のどこかで、巨人たちが待っている。



道は登り続け、光は変わり続けた。金色から青へ、そしてもうすぐとてつもなく高くなる森の、深い緑へ。第2話へ続く。
バイセイリアからセコイアへ・全2話























































