




Granite Days, Neon Nights花崗岩の昼、ネオンの夜
夜明け前の木目のダイナーでコーヒー、どこまでも平らなセントラル・ヴァレー、金色に染まるヨセミテの花崗岩。そして日が暮れたあと、ガソリンスタンドの明かりの下で、煙草をくゆらせる髭の見知らぬ男に出会った。
目的地のために計画する旅もあれば、道のりのために計画する旅もある。ロサンゼルスからヨセミテへは、その両方だ。フリーウェイから農地へ、農地から山へ、北へ五、六時間。その果てに、地球でいちばん有名な花崗岩がある。
けれど、この旅でいちばんの出会いは、どの地図にも載っていなかった。夜の入り口、モーテルの外に座っていたトラッカーキャップの男。彼の話はあとでしよう。まずは、コーヒーから。



ダイナーは木目の壁とブリキの看板だらけで、ケチャップとマスタードとホットソースが、出番を待つバンドのように並んでいた。僕らが入っても、誰も顔を上げない。ロードトリップで受けられる最高の歓迎だ。ここにいていい、ほかの誰とも同じように。


そしてセントラル・ヴァレー。カリフォルニアの、長くまっすぐで平らな心臓部。果樹園、穀物サイロ、町の名前を掲げた給水塔、北へ南へ永遠に走り続けるトラック。この谷は、通り抜けるのではない。海を渡るように、横切っていく。


そしてトンネルを抜けると、すべてがそこにある。左にエル・キャピタン、右にブライダルベール滝、奥にハーフドーム。人々は車を停め、降りて、黙る。誰もがこの写真を百回は見てきた。それでも、関係ない。


展望台に落ちる、僕らの影と、みんなの影。十数か国から来た見知らぬ人たちが、同じ壁の前に立ち、同じ山を指さしている。それもまた、ひとつのブラザーフッドだ。
千メートルの花崗岩



エル・キャピタンは、谷底からおよそ千メートル、まっすぐにそびえる。一枚岩の花崗岩だ。クライマーたちは何日もかけてその壁を登り、宙吊りのテントで眠る。道路からは、彼らの姿は見えない。ただ頭をそらし、さらにそらし続けるだけだ。


誰かが地図を描くずっと前から、この谷はアワニーチーの人々の故郷だった。1864年、南北戦争のさなかに、リンカーンがこの谷を守る法律に署名した。国立公園という考え方は、ほとんどここから生まれたと言っていい。


夏の終わりのブライダルベール滝。春よりも細く、崖から横に吹き流される白い糸。葉のあいだから見ると、それは叫びではなく、ささやきのようだった。



午後も遅くなると、草原は金色になった。花崗岩の壁があたたかく、やがてバラ色に変わり、松の影が草の上に長く伸びる。柵に腰かけた人たちは、ほとんど話さなかった。あんな光に、付け加える言葉はない。


太陽が崖の向こうに沈み、谷に最後の火花を投げた。そして終わった。いちばんいいものがたいていそうであるように、あっけなく、完全に。



夕暮れの峡谷を、ヘッドライトをつけて抜けていく。どこか下のほうを川が流れている。長い一日だった。ガソリンと、ベッドと、冷たい飲み物がほしかった。会話も必要だなんて、そのときはまだ知らなかった。

小さな町のガソリンスタンドの上に、満月。青い文字の「KWIK SERV」、舞台のように光るキャノピー。給油機と蛾のほかには、誰もいない。



しばらくそこにいて、光で遊んだ。長時間露光、懐中電灯で給油機の上に描く輪っか。旅に出ると、人は少しだけ子どもに戻る。


駐車場の向こうに、モーテルの看板。「Aladdin Inn」「My Garden Café」、そして大きなあたたかい文字で「ENJOY YOUR STAY」。夜の旅人にいちばん伝えるべき言葉はこれだと、ずっと昔に誰かが決めた。その人は正しかった。


赤いネオンの宝くじの賞金額、数字の灯った給油機、冷蔵庫の低い唸り。アメリカのガソリンスタンドの詩。必要なものはすべてあって、いらないものは何もない。一晩じゅう、開いている。

そして、彼がいた。モーテルの外のプラスチックの椅子に、木の格子を背にして座っていた。トラッカーキャップ、色の入った眼鏡、白い髭、くたびれたジャケットの下に赤いチェックのシャツ、指には火のついた煙草。彼はこちらにうなずき、僕らもうなずき返した。自己紹介は、それで十分だった。
スタンドの男



名前は聞かなかったし、彼も僕らの名前を聞かなかった。道のこと、その日どこを走ってきたかを少しだけ話して、あとはほとんど同じ静けさを分け合った。煙がキャノピーの明かりのほうへ昇っていく。ひと言もなくても、すべてを語る顔がある。彼の顔は、そういう顔だった。
BBrthrが旅をするのは、このためだ。有名な景色でも、誰もが撮る一枚でもなく、一日の終わりに出会う髭の見知らぬ男。少しの言葉と、少しの煙と、駐車場越しのうなずき。たぶんもう二度と会わない、そして決して忘れない、ひとりのブラザー。


そのあと、廊下で唸る自動販売機、ドアが並ぶ長い通路、世界でいちばんに思えたベッド。外では、ガソリンスタンドの上に月。どこかで、トラッカーキャップの男が煙草を吸い終えようとしている。
翌日、僕らは南へ戻った。谷はまた平らで金色で、その先にロサンゼルスが待っていた。エル・キャピタンを見に来たはずだった。けれど帰り道ずっと話していたのは、ガソリンスタンドのあの男のことだった。
























































































































